谷中の静かな町並みを歩いていると、ふと足を止めたくなる場所があります。
それが、谷中不動尊として親しまれている 總持院 です。

徳川家とのゆかりや、長篠の戦いにまつわる力強い逸話を持ちながら、境内には蓮の花や風鈴、そして猫の街・谷中らしい「やにゃか不動尊」のやさしい雰囲気も漂っています。

毎月28日は、お不動さまのご縁日。
さらに1月・5月・9月は「正五九参り」として、神仏とのご縁が深まる時期とも伝えられています。

この記事では、谷中不動尊(總持院)の歴史やご利益、護摩祈願、「やにゃか不動尊」の魅力、そして実際に訪れて感じた境内の風景を、やわらかく紹介していきます。

谷中不動尊とは

谷中のまちを歩いていると、ふっと空気が澄んだように感じる瞬間があります。
そんな静けさの中にそっと佇んでいるのが、谷中不動尊(總持院)です。

古い街並みに寄り添うように建っていて、初めて訪れてもどこか懐かしく、心が落ち着くような雰囲気があります。

谷中不動尊のご本尊は、徳川家康の江戸入りの際に、大久保七郎右衛門忠世が奉持したものと伝えられています。
大山不動尊と同じ木から作られ、同じく良弁作と伝わる由緒ある不動像で、長い年月を経ても大切に守られてきました。

お寺としての始まりは、慶長16年(1611)。
忠世の子・大久保忠隣の代に、栄松法印を開山として神田寺町に建立され、その後、慶安元年(1648)に現在の谷中へ移転しました。
谷中の穏やかな空気とともに、静かに歴史を重ねてきたお寺です。

このお不動さまには、力強い逸話も残されています。
長篠の戦いでは、徳川家の旗本の守護神として信仰され、勝利へ導いた霊験あらたかなお不動さまとして紹介されています。

静かな谷中の風景の中にありながら、その背景には、武家の時代を支えた深い信仰が息づいている。
そう思うと、境内で手を合わせる時間にも、自然と背筋が伸びるような気持ちになります。

さらに、NHK大河ドラマ『どうする家康』をご覧になった方には、少し心に残るご縁もあります。
谷中不動尊の公式Instagramでは、お寺に瀬名(築山殿)と、徳川家康の長男・信康のお位牌が安置されていることが紹介されていました。
ドラマの世界を思い出しながら訪れると、徳川家とのつながりをより身近に感じられるかもしれません。

そして最近、谷中不動尊には新しい“顔”も誕生しました。
その名も、「やにゃか不動尊」です🐈

毎月28日は、お不動さまのご縁日。
そして「2=に、8=ゃ」の語呂合わせで、猫の“ニャー”の日にも重なります🐾

猫の街として親しまれる谷中らしく、やさしい雰囲気の猫のキャラクター「やにゃか不動尊」が迎えてくれる姿は、思わず笑顔になってしまう可愛らしさです。

歴史あるお不動さまの厳かな雰囲気と、谷中らしい猫のやわらかな空気。
その両方が重なっているところに、谷中不動尊ならではの魅力を感じます。

かつては周辺の信者さんたちによって大山講中も組織されるなど、地域の信仰を支えてきた谷中不動尊。
今も変わらず、訪れる人を静かに見守ってくれているような、穏やかで温かな佇まいのお寺です。

谷中散歩の途中で、少しだけ足を止めて手を合わせたくなる。
そんな、歴史と親しみやすさがそっと寄り添う場所でした。

境内に咲く、淡いピンクの蓮の花

蓮の花
蓮の花

この日、境内でまず目を引いたのが、淡いピンク色の蓮の花でした。
大きな緑の葉の間から、ふんわりと花びらを広げる姿がとても美しく、静かな境内にやわらかな彩りを添えていました。

蓮の花は、朝の光を受けるとさらにやさしい雰囲気に見えます。
白に近い淡いピンクの花びらが重なり合い、どこか清らかで、見ているだけで気持ちが落ち着いていくようでした。

「やにゃか不動尊」の風鈴

やにゃか不動尊の風鈴
「やにゃか不動尊」の風鈴

蓮の花のそばには、竹の枠に吊るされた風鈴も並んでいました。
赤、緑、紫などの小さなガラスの風鈴が、夏らしい涼しさを感じさせてくれます。

短冊には、猫のキャラクター「やにゃか不動尊」が描かれていて、谷中らしい遊び心も感じられました。

ただ、谷中の路地やお寺の境内は、場所によって風が抜けにくいこともあり、不忍池の風鈴回廊のように風鈴が一斉に鳴り響く感じではありません。
むしろ、静かな境内に風鈴がそっと吊るされている、その控えめな雰囲気こそが谷中らしい魅力なのかもしれません。

風が吹くのを少し待ちながら、蓮の花と風鈴を眺める時間。
それもまた、下町の夏らしい、ゆったりとしたひとときでした。

護摩祈願

谷中不動尊(總持院)では、護摩祈願も行われています。
公式Instagramでは、護摩祈願のお知らせとして、迫力あるお不動様の近くで祈願を受けられると案内されていました。

祈願内容には、必勝、開運招福、商売繁盛、心願成就、良縁成就、安産祈願、家内安全、交通安全、身体健全、当病平癒、試験合格などが案内されていました。
また、その他の祈願についても相談できるようです。

祈願料は木札1本3,000円で、郵送を希望する場合は、お札1本につき追加で300円が必要とされています。
申込みは、祈願される方の名前または「○○家」、祈願内容、送り先住所、電話番号を添えて、郵送・FAX・E-mailで申し込む形のようです。

また、總持院の鬼大師の版木は、台東区の有形文化財に指定されており、護摩札には鬼大師の版画を貼って授与されるとのこと。
お不動様への祈願に加えて、總持院に伝わる歴史ある信仰にも触れられる行事になっているようです。

なお、護摩祈願の日程や申込方法、締切などは変更される可能性があります。
実際に申し込む場合は、谷中不動尊(總持院)の公式InstagramやFacebook、現地掲示で最新情報を確認しておくと安心です。

谷中らしいやさしさと、お不動さまの力強さに出会える場所

谷中不動尊(總持院)は、谷中の静かな町並みに寄り添うように佇む、歴史あるお不動さまです。
徳川家とのゆかりや、長篠の戦いにまつわる逸話を知ると、穏やかな境内の奥に、力強い信仰の歴史が息づいていることを感じます。

また、猫の街・谷中らしい「やにゃか不動尊」の存在や、蓮の花、風鈴の風景からは、親しみやすく心和む雰囲気も伝わってきます。
厳かな歴史と、やわらかな谷中らしさが重なっているところが、谷中不動尊の大きな魅力だと感じました。

お不動さまの炎は、煩悩や、心の中のモヤモヤとしたはっきりしない思考を焼き尽くし、すっきりとした状態へ導いてくれるといわれています。
そのうえで、素直な気持ちで願うことを、お不動さまに託す。そんな祈りの時間が、谷中不動尊には静かに流れているように思います。

また、「正五九参り」といい、1月・5月・9月は特に神仏とのご縁が深まると伝えられています。
お不動さまのご縁日である28日や、正五九の時期に合わせてお参りすると、より深いご縁を感じられるかもしれません。

谷中散歩の途中で、少しだけ足を止めて手を合わせる。
歴史に触れ、心を整え、そして谷中らしいやさしさにも出会える。
谷中不動尊は、そんな静かで温かな時間を過ごせる場所でした。

アクセス